第1回幹事会が令和6年6月6日(木)にWebにより開催され、兵庫県内の地域がん診療連携拠点病院等43病院及び関係病院等2施設・3団体の代表者が参加した。
※ 幹事、事務担当者等、代理を含め91名が出席 (欠席施設等:4施設)
(1)前回幹事会及び協議会議事録の確認
今年2月8日開催の第2回幹事会議事録及び4月11日開催の第19回協議会議事録は、本協議会のホームページに掲載されているので、内容の確認をしていただきたい。
(2)がん対策について (資料2/PDF: 1.8MB)
①兵庫県内のがん診療連携拠点病院等の指定状況について
がん診療連携拠点病院の指定については、原則がんの医療圏に一箇所指定することになっているが、令和6年4月1日現在で指定状況に変更があった。丹波圏域の県立丹波医療センターが県立がんセンターとの連携を前提に地域がん診療病院として指定された。以前、赤穂市民病院が同じ類型で指定されている。その他県指定の拠点病院8施設、準じる病院20施設について変更はない。なお、がんゲノム医療拠点病院、小児がん拠点病院についても従来どおり。
②第6次兵庫県がん対策推進計画におけるロジックモデルについて
兵庫県がん対策推進計画については、2月の幹事会において具体的な取組等について説明したが、今年4月から6年間の計画になる。本計画では、新しい取組となるロジックモデルに基づいて、指標等の評価を行い、円滑なPDCAサイクルの実効性を確保することになっている。
このロジックモデルについては、令和5年3月28日付けの厚生労働省健康局長通知の中で、評価にあっては全体目標、分野別目標及び個別目標と各施設の関連性を明確にし、PDCAサイクルの実効性を確保するためにロジックモデルを活用した科学的総合的な評価を行うこと。都道府県においても、推進計画に基づくがん対策の進捗管理において、PDCAサイクルの実効性を確保するためにロジックモデルの活用を検討することとなっている。
ロジックモデルはどんなものかは、資料のとおり計画目標である長期成果(最終アウトカム)を設定したうえで、それを達成するための中間成果(中間アウトカム)を設定し、中間成果を達成するために必要な個別施策を設置することで、計画から目標達成するまでの論理的な関係を体系的に図式化し、最終目的と個別政策が論理的に整合性を持った形で計画を立てることである。これまでPDCAサイクルは従来から最終目標と個別政策が必ずしもリンクしていなくて円滑にPDCAサイクルが展開できなかったという問題も指摘されていた。今回、がん対策計画のみならず同時に実施する医療計画も含めて、国はロジックモデルの活用を推奨しているので、これを用いて今後の計画進捗を管理、評価していくことになっている。
ロジックモデル作成目的は、構成を図示して全体像を把握し、関係者がアウトカムを共通認識として共有することで具体的施策が適切なのか検討し、個別の指標を設定して評価に繋げていく。国から示されたロジックモデルを踏まえて兵庫県独自のモデルを健康づくり審査会対がん部会の意見をいただきながら作成した。最終目的は、がん死亡者を減少させ、がん罹患者を減少させる。がん患者一人ひとりに寄り添い誰一人取残さないようにするといったことを最終アウトカムとする。それに関連する施策(中間アウトカム)を設定し、対応する個別施策を実施することによって、最終目的を達成することを資料は示している。
具体的には、がん予防に関しては生活習慣改善の推進、たばこ対策。早期発見に関しては、がん検診受診の促進、検診精度の向上に取り組む。医療体制については医療連携体制の構築、拠点病院を中心とした医療体制の整備、医療従事者の育成は専門的人材の育成といった取組を位置付けている。また、がん患者が安心して暮らせる社会に関しては相談支援の機能充実、就労支援。アピアランスケアでは社会参加などの取組みを実施することとしている。具体的な指標として県独自で定め、この指標をもって毎年達成状況を評価し、必要に応じて指標・計画は見直しを行う。75歳未満の年齢死亡率は国の基準より5ポイント程下回る状況を目標にしている。がんの年齢調整罹患率は全国35位程度となっているが、これを全国上位順位に持っていくことを計画の目標にしている。その他がん種別5年生存率も全体合わせて6割程度になっているので、さらに向上させていくことを計画目標にしている。
兵庫県の検診受診率はおよそ40%台前半となっているが、国の目標値が今回50%から60%になったことを踏まえて60%に引上げることにし、来年度に進捗状況など評価していく予定である。精密検査受診率は、国は90%を目標にしているが、兵庫県は60%から80%程度で、6年間で90%を達成できるように取組を進めている。指標の4では、緩和ケア研修の修了者数、がん相談支援センターにおける就労に関する相談件数などであり、ロジックモデルと指標を今後は評価して頂くことになる。
令和6年度の疾病対策課のがん対策関係事業は、がん対策推進条例とがん対策推進計画に基づき、がん対策を総合的に推進していくことにしている。3つの柱の「早期発見の推進」では、市町と連携して取組み、検診受診率を向上させるために重点市町を指定するとともに、国保県繰入金による市町取組支援の実施のほか、企業と連携してがん検診の受診促進に取組んでいくこと、また、がん対策推進基本計画において受診率の目標を50%から60%に引上げたこともあるので、がん検診受診率向上推進事業(新)により更なる取組を実施する。「医療提供体制の充実」では、がん診療連携協議会の場を通じて、がん診療拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、小児がん拠点病院を中心に医療提供体制を整備する。がん患者の療養生活の質の向上については、緩和ケア研修、アピアランスサポートも活用が進んでいるので、各市町と連絡を取りながら積極的に実施していく。「肝がん対策」では、肝炎インターフェロン治療等の公費助成ほか肝炎ウイルス感染者の保健指導を実施していく予定にしている。最後にがん検診受診率向上対策推進事業等については、市町に対してがん検診率向上に向けて研修会を開催するほか、Web広告等を活用した普及啓発を県内在住の受診対象者に周知する。がん検診60%達成に向けた集中キャンペーン月間を10月に位置づけで取組を進めていくことで、40%という全国に比べて低い水準をもう少し向上させていくために、県、市町、医療関係者や団体とも連携しながら取り組みを進める予定としている。
〇意見・提案
① ロジックモデルの話は初めてだが、最終アウトカムで死亡数を減少させることが出ている。資料の最後には、がん検診受診率の推移と全国順位が掲載されている。これと同じように75歳未満年齢調整死亡率の部位別、年別の全国順位も掲載されてはどうか。また検診率と受診率を記載することで、別の視点から提案が出てくると思う。75歳未満年齢調整死亡率の年別表記をがん検診の年別表記と同じように掲載されてはどうか。
② 検診率が非常に低いので、この件いついては協議会としてもっと力を入れるすべきで、総力を上げてやるべきだと思う。
③ がんに罹患したとしてもステージの早い段階で発見できれば有難い。ロジックモデルの全体図の中に「がん予防」「早期発見」「医療体制」「安心して暮らせる社会」とあるが、がん予防と早期発見に力を入れなければ検診に繋がらない。年齢調整死亡率も下がらないし、がんもステージの早い段階で発見されない。がん教育は、安心して暮らせる社会の中に入っているが、がん予防や早期発見に入れるべきである。また、学校教育ではなく成人の教育として扱い、成人教育に力を入れないとアウトカムは達成されない。防災の資料は家庭に多く配られているが、それと同様にがん対策の資料を各家庭に配るなど、色々な知恵が出てくると思う。
<回答>
がんの部位別、75歳未満年齢調整死亡率等の数値については、資料の見直しの際に位置付け等をがん対策部会に諮った上で整理していきたい。がん教育についても、県、市町との連携が必要なため、連絡会議等の際にがん検診向上のためにどのような取組が必要か、各家庭への周知取組についても意見交換したうえで、受診率向上に向けて取り組みを進めていきたい。
〇質問
① 緩和ケア研修の受講者数の目標値が設定されていますか。
<回答>
- 目標値は、今回は計画の中のあくまで指標の改善状況で、今現在では位置付けていない。今後は、目標値を含めて意見交換を踏まえて対応したい。
<その他の意見>
- がん診療連携拠点病院の指定要件に、受講者数はあるのでは。(幹事長)
- 指定要件では90%以上と決められているが、がん診療連携拠点病院以外の医師が緩和ケア研修会を受けることは現実的に難しい。興味のある医師はほとんど受けられていて、もう研修医しか増えない状況にある。その現状を踏まえてロジックモデルで修了者数として指標値を設定してもアウトカムに影響しない。設定されるのであれば、具体的にどうアプローチするか検討いただきたい。(緩和ケア部会長)
② 検診の受診率が低調である背景因子は何か。
<回答>
- 国の統計調査では「時間がない」「健康に自信がある」などの理由で検診に行かない。何よりも海外に比べ日本の検診率は低いということもあるが、やはり日本の医療は低単価で良質な医療が受けられることもある。いずれにしても「がん検診」「早期発見」「早期治療」が重要であるので、粘り強くがん検診受診について呼びかけ、SNSを活用した情報提供を進めていくことにしているので、協力をお願いしたい。
<その他の意見>
- 検診率が低いのは、去年に国が目標を50%から60%に引上げると言った時に何か新しい手段があるか聞いたが、色々考えているとの回答があった。疾病対策課に国は新しい案を出したか聞いたところ、大した案はなかったとのこと。引上げたのは肺がんか何かの検診率が上がったので引上げたが、新しい対策を打たないと上がらない。(議長)
- 肝炎のウイルス検診は全国5~10位内。それは積極的に呼びかけをしているからで、がん検診も積極的にやらないと効果がでない。(ひょうごがん患者連絡会)
(3)協議会会則の改正について(資料3/PDF: 324KB)
今回の協議会の改正は、昨年4月に兵庫県立丹波医療センターが特例型の地域がん診療連携拠点病院として1年間指定されていたが、今年4月からは地域がん診療病院として指定されたことに伴う改正。会則は別表の兵庫県の地域がん診療連携拠点病院において、丹波圏域の兵庫県立丹波医療センターを削除して、兵庫県の地域がん診療病院に丹波圏域、兵庫県立丹波医療センターを挿入している。改正施行日については、第19回兵庫県がん診療連携協議会の開催日である令和6年4月11日とする。
(4)協議会・幹事会並びに各部会の令和5年度活動報告及び令和6年度活動計画
(資料4/PDF: 13.9MB)
①「協議会・幹事会」関連
令和5年度の活動報告は、資料のとおり第18回協議会、第1回・第2回幹事会を開催した。ひょうご県民がんフォーラムは、けんみんホールで「手術、薬だけでない がん治療」をテーマに、加古川中央市民病院の担当で開催した。本年も同様に協議会を4月11日に既に開催し、第1回幹事会が本日、第2回幹事会は令和7年2月13日に予定している。本年度のひょうご県民がんフォーラムは、10月19日に兵庫県看護協会会館で、兵庫医科大学が担当して「がんと診断されたら患者力を高めるには」ということで、現地とWebのハイブリットで開催を予定している。
②「研修・教育」部会関連
令和5年度活動報告は、がん看護コアナース育成セミナーは、3回に分けてWebで開催し、21名の参加で実施された。研修・教育部会セミナーは、10月7日に「がん診療におけるAIの最新活用」をテーマにハイブリット方式で開催し、現地14名、Web 61名の参加があった。検査セミナーは、12月2日に「初診時からのゲノム医療~婦人科ではどのように治療計画を立てるのか」をテーマにパルテホールで開催し、現地34名、Web 56名の参加があった。薬剤師セミナーは、2月17日にけんみんホールで「婦人科がん治療・irAE対策」をテーマに開催し、現地50名、Web 55名の参加があった。兵庫県がん化学療法チーム医療研修会は、11月12日に開催を予定していましたが、諸般の事情で開催できなかった。ひょうご県民がんフォーラムは、10月21日に「手術・薬だけじゃない がん治療」をテーマに加古川中央市民病院の担当で開催し、会場85名、Web 45名の参加があった。
令和6年度の活動報告は、がん看護コアナース育成セミナーは、11月22、29日、12月6日に開催予定で、希望者には1日のみの体験研修を実施し、テーマは「不眠は夜の問題ではない」です。兵庫県がん化学療法チーム医療研修会は、11月30日に「がん治療における妊孕性温存」をテーマに兵庫県立がんセンターで会場のみの実施。研修・教育部会セミナーは、10月5日に神戸市教育会館で、川崎病院副院長の企画で「消化器がんに対するロボット手術の現状と未来」をテーマにハイブリットで開催される。放射線セミナーも10月12日に神戸市教育会館で開催され、テーマは「直腸がんの診断と治療―update―」、開催方式は未定。検査セミナーは、12月14日に神戸市教育会館で「がんと感染症(仮)」をテーマにハイブリット方式で開催予定。薬剤セミナーは、令和7年2月8日に神戸市教育会館で「ICIによるirAE・薬剤師外来(仮)」をテーマに開催方式は未定だが開催予定。ひょうご県民がんフォーラムは、兵庫医科大学の担当で10月19日に「がんと診断されたら~患者力を高めるには~」をテーマに開催予定。
PDCAサイクルですが、令和5年度で兵庫県がん化学療法チーム医療研修は開催されなかったので✕、他は達成でWeb、ハイブリット方式が多い傾向で、多くの方に参加いただいた。Webだけで開催した場合、現地での参加を希望する意見もあり、がん看護コアナース育成セミナーではオンライン開催だが、見学実習を希望される場合は受け入れる。
③「情報・連携」部会関連
令和5年度活動報告は、前回の幹事会での説明に加えさせて頂くと、3月分の情報・連携部会と事務局会議が加わっている。いずれも前回に審議頂いた働き方改革に伴う部会の構築についてをメインテーマとして実施した。
令和6年度の活動計画は、前回案内したように年4回開催していた部会は2回にまとめて実施します。5月の事務局会議には管理的立場の方も出席頂いたが、その時に今までオンラインで開催していた部会は、互いを知るという交流の面もあるので対面で開催することとなった。事務局会議も毎月開催から奇数月開催に減らして負担を減らす計画。就労関連については、意欲的に取り組んできたが、今年度が一つの区切りということで、まとめに向けて様々活動していく。ピアサポーター関連については、例年通りピアサポート養成研修への支援とフォローアップ研修会交流会の開催に協力する。このピアサポートを病院でどのように患者さんに還元するかについて、県、患者会と相談しながら進めていく。
PDCAサイクルの令和5年度は概ね達成。一部未達成などあるが情報連携部会の体制変更もあって、未達成とか単年度では達成が難しく継続になるものが主になっており、全体として概ね計画通りに進められた。令和6年度は全体として、これまでの活動を発展する形で、しかも働き方改革と並行しながら成立できるように進めていきたい。
④「がん登録」部会関連
令和5年度活動は、部会を6月27日Webで開催し、院内がん登録、関連スケジュールの概要等について議事を行った。がん登録実務者ミーティングは、第1回を11月14日、第2回を2月2日にそれぞれWebで開催した。2回目の部会では協議会ホームページ公表案について協議し、これについては資料を添付している。全国がん登録実務者研修会は、「全国がん登録の届出実務とデータ分析」について9月21日から10月31日まで動画配信した。
令和6年度の活動計画、今後の検討課題は、がん登録部会を6月26日開催予定、院内がん登録実務者ミーティングは11月14日と来年2月の2回を予定している。がん登録に関する研修会は、開催時期・内容についてこれから検討する。
PDCAサイクルについて、令和5年度は「がん診療情報収集・分析」「がん登録実務の精度向上」「全国がん登録情報の予後情報還元申請」を課題に挙げた。診療情報の分析については、兵庫県がん診療連携協議会のホームページに施設別がん登録数のデータを掲載している。がん登録実務の精度向上ついては、年2回のがん登録実務者ミーティングで全国のがん登録関連の動きを伝達する実務者研修の動画を配信している。全国がん登録情報の還元については、各医療機関にアンケート調査を実施した。令和6年度では、引き続き昨年度と同様に取り組みを進めていきたい。
⑤「緩和ケア」部会関連
令和5年度の活動報告は、2月の幹事会で報告しているが、追加での報告は2月22日に部会を開催した。議事録を添付しているので参照いただきたい。
令和6年度の活動計画に関しては、昨年度と同様に小集団活動で準備を進めている。添付の資料は、都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会の緩和ケア部会、国立がん研究センター先端医療開発センターの小川先生から、兵庫県の緩和ケア部会としてこのロジックモデルを用いたツールに関して研修開催の協力依頼があり、その概要を示している。この依頼は全くパイロット的なもので、第1回の緩和ケア部会で検討しているが具体案が煮詰まっていないので、協力は難しいという議論をしていることを報告する。
令和5年度のPDCAサイクルでは「緩和ケアチームピアレビュー」と「インターベンショナル治療」に関する活動を挙げているが、概ね達成できたと評価している。6年度の活動計画は、5つの小集団活動に関してプランを挙げており、5年度と同様の活動になるが粛々と進めていく。各施設5つのグループに分かれて協力頂いている状況になる。会議は部会を年4回、運営会議は月1回とする。
⑥「地域連携」部会関連
令和5年度は、毎年と同様にがんの地域連携パスのアンケートを実施している。令和4年度の登録件数を含めて累計で約1万2千余りのパスが活用されている。地域連携に関しても遠隔診療等についてもアンケート調査を実施した。
令和6年度についても同様に、がん地域連携パスの各施設での導入・活用状況、パスの運用上の問題点など抽出して改善を図る。がん地域連携に関する問題点を抽出し、対応を検討する。
令和5年度の達成状況(PDCAサイクル)としては、アンケート調査による課題の抽出、ワーキンググループによるパスの改訂で、令和5年度において肺がん、前立腺がん、胃がんのパスの改訂が行われた。がん地域連携の課題抽出に関しては解決策が出せなかったので、概ね達成の△にしているが、前2つは達成後も継続が必要と考えている。令和6年度も同様の計画を立てている。
アンケート結果から、2024年3月末の累計登録件数は14,300余りで多数のパスが運用されており、国内でもかなり有数のパス利用県だと思っている。逸脱はトータルで1割程度、大きなバリアンスはあまりなかったという状況です。活用状況では、国指定拠点病院では1つ以上使用されているが、県指定拠点病院・準ずる病院では使用されていない施設があって、現在調整中のところが7施設ある。できるだけ導入をお願いしたい。資料に稼働件数の多い10病院を掲載しているが、病院によって特性がある。関西労災病院は胃がん、県立はりま姫路総合医療センターは乳がんが主に使用されている。お互い情報共有して全てのパスが使用されるように期待している。前立腺がんは、後から作られたパスだが、稼働件数は千件を超えている。泌尿器科の先生の努力に感謝している。パスの逸脱に関しては、肝臓がん、肺がんが多い。バリアンスの発生も肝がんが多くパスもあまり使われていない。これについて、ワーキンググループで考えていただけたらと思う。逸脱の理由は、がんの再発と社会的要因だった。
Webによる退院前カンファレンスは、回線が途切れる・アカウント数に制限があるなどの問題がある。遠隔診療(リモート診療)については、遺伝外来や緩和ケア外来を試験的又は新型コロナが広がった時期に実施した施設はあったが、インフラが不安定だったり個人情報の課題があってなかなか普及は難しい。がんゲノム医療については、治療に繋がった率は、一般的には10%程度だが、平均で16%あった。治療に繋げるために心がけていることは、正しい情報、早めに患者に説明して提案、検査のタイミングを逸しないことなどの回答があった。
〇胃がん術後の地域連携パスの改訂案について
今回の改訂で2点変更を考えている。1点目は進行度分類図で7個以上リンパ節転移がある状態をN3とするが、その中でも15個以下をN3a、16個以上をN3bと項目の追加になり、それに伴ってステージも少し変わる。2点目は補助化学療法に関して、➀対象がステージⅡ〜Ⅲの一部を除いたものが対象になっていることを明記。対象のステータスに関し、進行度表に水色を付けた。使用薬剤の記載を加え、ステージⅡ〜Ⅲに対し使用レジメン4つが診療ガイドライン載っているので明確に記載し、投与スケジュール(図3)に色付けして、経口薬は1年とか注射薬は半年であることを明記し、分かりやすくしたとの説明があり、これについては、この幹事会で承認された。
(5)小児がんの進捗状況について (資料5/PDF: 3.7MB)
兵庫県立こども病院は、第三期小児がんの拠点病院事業から拠点病院として認定され、この事業は、小児がんに関して集約化、均てん化、あるいはライフステージに応じた療養関係支援といったことに強く触れられている。
均てん化・集約化については、当院は全国の小児がん拠点病院の症例数から西日本でも有数のハイボリュームセンターとして機能している。それを支える小児血液がん専門医6名、日本血液学専門医10名を擁して診療にあたっている。
この事業は、当初は拠点病院で全国の小児がん患者を網羅したいと考えられていたが、実際には血液腫瘍、固形腫瘍を合わせて3割程度の患者が治療を受けている状況で、それ以外の7割は拠点病院の連携施設で治療を受けている状況で、事業の見直しが行われた。準拠点病院である小児がんの連携病院のカテゴリー1の中から、症例数と十分な経験がある施設を準拠点病院としてカテゴリー1Aとし、拠点病院と連携して全国の小児がん患者の多くをカバーする軌道修正が行われている。兵庫県内では、県立尼崎総合医療センター小児血液腫瘍内科と神戸大学医学部附属病院小児科がカテゴリー1Aとして、この3病院で多くの患者が診療を受けている。また、小児がんのチームとして診療支援、各種研修、或いはWeb会議などを通じて密に連携を図りながら均てん化に努め、令和6年度からは県立はりま姫路総合医療センター小児科も加わり、県内11の病院と連携を取りながら県内全体をカバーしていくことで、努力している。
一方、他府県では十分な診療経験がある施設が存在しない府県もあって、事業全体の大きな問題点とされ、現在解決を図るべく議論が進んでいる。近畿には4つの小児がん拠点病院が指定されているが、その中で地理的に兵庫県立こども病院が一番西に位置することで、中四国唯一の拠点病院である広島大学病院、その西の九州大学病院、この広域の先生方とWeb会議等を通じて連携を図っている。兵庫県立こども病院の特色である陽子線治療は、広範囲の施設から患者紹介を頂いて治療にあたっており、小児領域の陽子線治療としては、全国1位の診療実績を持っている。人材育成についても中四国の施設や香川大学とも連携して専門医の育成に努めている。
前回も報告したが、2022年12月に遺伝子改変T細胞療法いわゆるキムリアのCAR-T細胞療法の施設認定を受けて昨年度3例の治療を実施し、現在これを進めている。25歳未満の難治性急性リンパ性白血病(小児は白血病)に関して症例を積み上げている。がんゲノム医療については、東京大学のチームが中心にTOP2という小児がんに特化したパネルを開発し、JCCGという小児がん研究グループが実行可能性を検証する研究が行われた。その結果GenMineTOPというパネルの臨床実装が可能となり、以前より診断に必要な電子情報などが豊富に得られることになって、これを活用して小児がんで展開してきたという全体構想になっている。小児がんのゲノム医療は若干成人に比べて遅れていたが、昨年8月に小児に特化したがんゲノムプロファイリングシステムが保険適用になった。ファウンデーションワンリキッドについても小児に関して適用が広がり、ガーダントも入り、かなり選択肢が増えている。小児がんでは、ドラッグラグ(出口戦略)だけでなく診断や予後予測に必要な検査(入口戦略)が保険で認められていないものが多くあって、両方の戦略を包括的に課題解決を図っていこうというグランドデザインの中で貢献できるように進めている。<
こども病院の「きょうだい支援」は、入院中の患者の兄弟姉妹を兄弟ルームに1~2時間預かり、その間にゆっくり両親に揃って話を聞いて頂く制度で、今年度からは病院全体でWi-Fiが使えるので、ICTを活用した遠隔授業を進めている。また、移行期医療については、成人診療科がないので、神戸大学に指導いただきながらトランジッションを進めている。
(6)その他 (資料6/PDF: 640KB・別冊/PDF: 2.6MB)
- 前回の幹事会、4月の協議会で提案した「抗がん剤手帳」というか、長期のサバイバーに関してのアントラサイクリン系薬剤の心毒性等に関する情報が取れないことで、たたき台となる手帳の案を県立がんセンターの腫瘍循環器科で作成したので説明いただく。(幹事長)
- 先ほど小児の移行期医療の話があったが、成人においてもサバイバーシップケアが問題になる中で、当院の循環器科外来において、過去の心毒性のある抗がん剤を服用された方が、がんの治療成績向上に伴って癌自体は制御されるが、その副作用として心不全になって戻ってくる方が複数あった。心不全になること自体は仕方ないが、早期に介入することで心不全の治療介入ができ、心不全の予後も改善できる。患者自身が心毒性の抗がん剤を使用したことを把握し、自己管理してもらうためにこの手帳を提案した。 考えているのは、手帳形式にして永続的に一冊で管理する。これはあくまで案だが、表紙の裏にサバイバー手帳の意味づけとし、がんサバイバーという言葉の意味付けを提示する。あとは一般的なかかりつけ医の記載。アレルギー情報、採血等の禁止の腕、心毒性や血管毒性歴の有無など小児がんのフォローアップ手帳などを参考にしている。近年、免疫チェックポイント阻害剤で急性期の有害事象も問題になっているが、長期投与によって動脈硬化を併発するとも言われており、これに関しても投与歴を把握して自身で把握できる欄を設けた。心臓にフォーカスすると、左胸部や縦隔の放射線照射歴も晩期障害が問題になるので、これも記載欄を設けた。さらに血液サラサラ薬の服用、サバイバーシップケアのフォローに関して心エコーの予定など可能であれば患者自身に管理頂く欄を設けた。また、心毒性に関りがないが、自身のがん治療歴、体内の医療異物の記載欄も設けた。その他心不全のリスクになるような動脈硬化疾患、関連した血管疾患に関する記載欄も設けた。(県立がんセンター腫瘍循環器科)
- どこまで記載するか議論はあったが、サバイバーということで案を作成してもらった。特に関係してくるのはAYA世代とか、連携するのであれば地域連携とか絡んでくると思うが、これに関して意見はないか。(幹事長)
- 小児の手帳を参考にして頂いているので安心している。項目が違えば古いカルテを探す必要が出てくる。置き換えができるスタイルを考えていただいておれば活用しやすい。(県立こども病院)
- ステークホルダーをどこまで広げるかによって、使いにくいという人も出てくるかもしれないので、この案をすぐに承認かと聞かれれば即答しにくい。試みはいいことなので、出来上がれば使っていきたい。(地域連携部長)
- 広げ過ぎるとがん全体になるので、基本的には最初は心毒性に関したものにさせていただけたい。項目が多すぎるとか、これが足りないという意見はありますか。(幹事長)
- 情報提供ですが、小児がんグループで、AMED(エーメド)の研究班としてアプリの開発が進んでいる。患者自身でその情報を携えてもらい、患者自身が情報をスマホに持って示してもらうようになるかもしれない。(県立こども病院)
- それは、いつ頃できるのか。(幹事長)
- ある程度できていると聞いている。汎用は3年計画で現在2年目と聞いている。(県立こども病院)
- 本来は、マイナンバーカードに全部紐づいていたら一番いいと思う。これについて何か意見があれば、1か月以内に連絡をいただきたい。とりあえず、使い勝手が悪いかもしれないが当院で仮運用させていただくことでよいか。アプリがあれば全部デジタルになるので、将来的にはいらなくなるかもしれないが、それを言えば地域連携パスもいらないかもしれない。とりあえず、母子手帳や地域連携パスのような形で何か患者が持てるようにさせていただきます。(幹事長)
② 希少がん中核拠点センターの整備について
国の第4期がん対策推進基本計画において、希少がん難治性がんのがん対策が挙げられて、希少がん全国ネットワークを構築しているところで、全国を北海道、東北、関東、中部、近畿、中国・四国、九州の7地方に希少がん中核拠点センターの整備を進めている。近畿は大阪国際がんセンターが中核拠点センターとなると聞いている。まだ具体的は動きではないが、各県内の拠点病院を中心に紐づけが始まり、おそらく中核拠点センター、拠点センターみたいな形で整備が行われていくと思うので、ご協力お願いしたい。
③ 兵庫県のがん教育とがん検診受診促進について
- 兵庫県のがん検診率はどの部位をとっても全国40位前後で、これは人口が多いからと言われていたが、ちなみに東京都の2022年は胃がん20位、大腸がん12位、肺がん26位、乳がん4位、子宮がん5位ということは、兵庫県も何か工夫をしないと順位は上がらないことになる。兵庫県のがん対策推進計画におけるロジックモデルの中で、がん予防と早期発見を進めなければ、死亡率を減少させることにならない。先ほど協議会の各部会から発表があったが、協議会にがん教育部会、検診部会みたいなものを考えて進めないと兵庫県全体の順位が上がらない。(がん患者連絡会)
- 検診の受診率は、県内において都市部と地方で地域差があるか。(幹事長)
- 手元に資料がないのでわからないが、受診率は市民に対する啓発が重要になるので、今後、市町と連携したり、がん対策部会やこの協議会で議論を踏まえて取り組みを検討したい。(疾病対策課)