第18回兵庫県がん診療連携協議会(以下、協議会)が令和5年4月13日(木)にWeb開催された。兵庫県内の国指定がん診療連携拠点病院、小児がん拠点病院及び関係団体の代表者等委員28名のうち、代理出席を含めて28名全委員が出席した。
(1)前回幹事会及び協議会議事録の確認
昨年4月7日開催の協議会、6月16日開催の第1回幹事会、今年2月9日開催の第2回幹事会のそれぞれの議事録は、協議会のHPに掲載されているので確認いただきたい。今回も、議事録はHPに掲載を予定しているので了承願いたい。
(2)がん対策について (資料2/PDF: 2,762KB)
①兵庫県内のがん診療連携拠点病院等の指定状況について
昨年8月に国指定の拠点病院の整備指針に見直しがあった。これに合わせて県指定の拠点病院についても国の整備指針に準拠して見直をした。これらに基づき、令和5年4月からの新たな指定状況の内容を説明する。
変更となったところは、北播磨圏域では昨年度まで国指定だった市立西脇病院がこの4月から県指定に、県指定だった北播磨総合医療センターが国指定となった。これについては、施設の診療実績、診療機能、医療従事者等の状況を判断し、それぞれの医療機関や国とも相談して4月から国指定と県指定が入れ替わった。
西播磨圏域では赤穂市民病院がこれまで地域がん診療連携拠点病院だったが、地域がん診療病院に指定類型が変更になった。がん診療病院とは、平成26年の国の整備指針改定時に新たに制度化されたもので、二次医療圏内に拠点病院がないところにおいて、隣接する医療圏の拠点病院と連携して専門的ながん医療の提供、相談や情報提供を行う医療機関であり、今回はじめて兵庫県内で指定された。連携先は加古川中央市民病院である。
また、丹波医療圏では県立丹波医療センターが引き続いて国指定拠点病院とされているが、特例型という指定になっている。この特例型は指定要件の充足が不十分ということで、指定期間は通常4年のところが1年間となっている。これは昨年8月に整備指針が見直され、指定要件が強化、追加された項目を翌月9月の1か月では充足は難しいので、1年間猶予するので取り組んでほしいということである。令和6年に向けて今から準備していただきたい。
②令和5年度当初予算について
資料は兵庫県がん対策推進計画に基づき、分野別にまとめたものである。令和5年度予算額のトータルは約12億3,800万円と前年比で1億7,500万円ほど減少している。主な要因は、「医療体制の充実」の中のインターフェロン等医療費の助成で約1億2,000万円減少している。これはC型肝炎の受給者が最近1~2割程度減少していること、B型肝炎治療薬核酸アナログ製剤の使用がジェネリックに移り変わっていることなどにより減少している。また、がん検診医療従事者資質向上研修事業費で受診率が低い乳がん検診の研修開催費として、金額は少ないが増額となっている。
③第4期「がん対策推進基本計画」の主な見直し等について
第4期がん対策推進計画は3月28日に閣議決定された。構成は「全体目標」とその下に「分野別施策」があり、分野別施策では「がん予防」「がん医療」「がんとの共生」「これらを支える基盤」で構成自体は前回の第3期と変わらないが、項目の記載箇所が一部変更された。
変更箇所は、がん登録、緩和ケア、小児・AYA世代と高齢者、自殺対策などで、新たに医療提供体制の均てん化・集約化、患者・市民参画の推進、デジタル化の推進が追加された。(※項目の記載箇所の変更、新設された項目について、第3期と第4期のがん対策基本推進計画の比較表により説明があった。)
第4期のがん対策基本推進計画見直し内容について、次のとおり説明があった。
・全体目標について、第4期は「誰一人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指す」に変更された。
・各目標に対する評価について、ロジックモデルを活用する。内容については、現在国で検討されている。
・がん検診受診率の目標を50%から60%に引き上げる。現在男性の肺がんを除き、受診率は50%に達していない。
・医療提供体制の均てん化・集約化について、がん医療が高度化する中で質の高い医療を提供するにあたり、均てん化だけでなく拠点病院等の役割を踏まえた集約化を推進する。
・感染症発生・蔓延時や災害時等を見据えた対策として、コロナ禍において、がん検診を控えたりコロナ患者の治療を優先したことがあった。必要な時にがん医療を提供できるよう地域の実情に応じた連携体制を整備する取り組みを平時から推進する。
・患者・市民参画について、がん対策基本法に、がん対策推進協議会の委員として がん患者やその家族などから委員を任命するとされている。がん対策の取り組みにこれらの方の参画に関する項目が新設された。
・デジタル化について、コロナ禍でデジタル化が進んだ。デジタル社会の実現に向けて個人の健康や医療のデータ化とその利活用の検討、オンライン診療の提供や相談支援のオンライン化等に関する項目が新設された。
以上、国のがん対策推進基本計画が見直されたので、この計画を基本に今年度は兵庫県において新たな計画を策定する予定としている。
(3)協議会会則及び幹事会運営要領の改正について(資料3/PDF: 238KB)
今回の改正は、昨年8月にがん診療連携拠点病院等の指定要件が見直されたことにより、赤穂市民病院が地域がん診療連携拠点病院から新たに地域がん診療病院に指定されたこと、また北播磨総合医療センターが西脇市立西脇病院に代わって北播磨圏域における地域がん診療連携拠点病院に指定されたことに伴う改正である。
協議会会則は第3条第1項第3号に「兵庫県の地域がん診療病院の病院長」の挿入と所要の整備、別表の地域がん診療連携拠点病院の北播磨圏域において、西脇市立西脇病院から北播磨総合医療センターに改正し、播磨姫路圏域の赤穂市民病院を削除、新たに地域がん診療病院の項目を設け、播磨姫路圏域、赤穂市民病院を挿入する。
幹事会運営要領は、第3条第1項第3号に「地域がん診療病院の病院長の推薦した者」の挿入と所要の整備、別表1の北播磨圏域において、北播磨総合医療センターから西脇市立西脇病院に改正する。
この度の会則及び運営要領の改正施行日は、本日第3回兵庫県がん診療連携協議会の開催日、令和5年4月13日とする。
※兵庫県がん診療連携協議会の組織体制と幹事・部会員一覧について
議長から協議会、幹事会、部会など協議会の組織体制などについて説明があった。
(4)協議会・幹事会並びに各部会の令和4年度活動報告及び令和5年度活動計画
(資料4/PDF: 2,901KB)
①「協議会・幹事会」関連
令和4年度の活動報告は、4月7日に協議会、6月16日に第1回幹事会、2月9日に第2回幹事会を全てWebで開催した。当協議会主催の第12回「ひょうご県民がんフォーラム」は、11月26日に姫路医療センターの担当で「肺がんと膵がんの最新医療について」をテーマにハイブリッド方式で開催し、会場71名、Web92名の参加があった。
令和5年度の活動計画は、協議会は本日4月13日Webで開催、第1回幹事会は6月8日、第2回幹事会は開催日が未定だが、来年2月頃に開催の予定。開催方式は、5月8日に新型コロナが5類に引き下げられた状況を見て考える。第13回「ひょうご県民がんフォーラム」は、10月21日に「けんみんホール」で加古川中央市民病院の担当で開催する。テーマは未定。
②「研修・教育」部会関連
令和4年度は、「がん看護コアナース育成セミナー」は3回行った。いずれもWeb開催し、比較的充実した内容であった。「研修・教育部会セミナー」は10月8日に県立西宮病院の企画で開催された。「up to date遺伝性腫瘍」をテーマにハイブリットで開催。会場20名Web99名の参加があった。「放射線セミナー」は10月15日に「膵臓がんの診断と治療-update-」をテーマにハイブリットで開催。会場66名、Web193名の参加があった。「検査セミナー」は11月5日に「オンコロジー・エマージェンシー」をテーマにハイブリットで開催。会場41名、Web96名の参加があった。「薬剤師セミナー」は1月21日に「消化器がん治療」をテーマにハイブリットで開催。会場12名、Web146名の参加があった。第8回兵庫県がん化学療法チーム医療研修は11月6日に「がん治療における妊孕性温存」をテーマにWeb開催。6チーム25名の参加があった。第12回ひょうご県民がんフォーラムは11月26日に「肺がんと膵がんの最新医療について」をテーマに姫路医療センターの担当で開催。会場71名、Web92名の参加があった。
令和5年度の計画は、「がん看護コアナース育成セミナー」はWebで8月に3日間の予定で開催。テーマは「がん患者さんが死にたいと言われたとき」で、Webで開催。「兵庫県がん化学療法チーム医療研修会」は、テーマは「がん治療における妊孕性温存」で、開催日、開催方式は未定。「研修・教育部会セミナー」は10月7日開催予定。テーマは「がん治療におけるAIの新展開」ということで、明石市立市民病院に企画をお願いしている。開催方式は未定。「放射線セミナー」は10月14日に肝臓がんをテーマに開催予定。開催方法は未定。「検査セミナー」は12月2日に開催し、テーマ、開催方法は未定。「薬剤セミナー」は2月17日に開催。テーマ、開催方式は未定。第13回「ひょうご県民がんフォーラム」は10月21日に県民ホールで加古川中央市民病院が担当して開催。テーマ、開催方法は未定。
昨年のセミナー、研修会は基本的にはハイブリットが多かった。現地では顔の見える緊密な質疑応答ができるが、Webだと難しいかもしれない。兵庫県は広く遠隔地の方が参加しやすいというメリットがあるので、経費がかかるかもしれないが、基本的にはハイブリット方式を継続する方が良いのではと感じている。
③「情報・連携」部会関連
令和4年度活動報告は、部会会議を年4回開催した。テーマは「早期からの就労支援」、認定がん専門相談員の「アピアランスケア」、「ピアサポーターとの交流会」、PDCA「活動評価と来年度の計画検討」で開催している。それに付随して他に事務局会議を月1回開催し、記載のような内容で開催。内容は多岐にわたるので、小グループに分けて検討している。
令和5年度も基本的には同様な内容で行っていく予定であるが、4年度のPDCAサイクルで「✕」が付いているのが、国立がん研究センターが主催する「がん相談指導者研修会」の応募希望者がいない。指導者3人の退職もあって兵庫県内で6人。この指導者が増えないと相談員の養成が出来ない。この研修会は平日4日間の開催のため、受講者が減り先細りになる。情報・連携部会で各拠点病院への受講の割り当て検討を考えているので、この研修会の申込時期が4月になるが、各施設からの協力をお願いしたい。
また、国の整備指針が改定になって協議会の役割、情報連携や相談支援も新しい項目に対応していく必要がある。当部会の会議の分量が増してきているので、相談員の会議出席について各施設のご配慮をお願いしたい。
就労支援については、早期からの就労支援となると、医療の入口である地域の開業医の先生方がここを支えておられるので、各医師会や開業医の皆さんの協力が必要になってくる。昨年、協議会から県医師会にお願いする文章を県医師会の理事、事務局に相談している。本日の会議に県医師会会長も出席されておられますが、医師会の方々にも就労支援についてご協力をお願いしたい。
④「がん登録」部会関連
令和4年度は、がん登録部会を6月28日にWeb開催した。内容は4月27日に開催された国の連絡協議会がん登録部会での内容の情報提供を行った。45施設53名の参加者があった。院内がん登録実務者ミーティングは2回開催した。1回目の11月14日は国立がん研究センター江森先生に協力いただき、65施設136名の参加があった。2回目は2月3日に兵庫県がん診療連携協議会ホームページに掲載する2020年症例の内容について検討した。Webで開催したが、40施設75名の参加があった。全国がん登録実務者研修会は、国立がん研究センターの松田先生に講師をお願いし、全国がん登録の届出実務について9月21日から約1か月間動画配信して301回の視聴回数があった。
令和5年度は、前年度とほぼ同じ内容で、時期については具体的なことは決まっていないが、決まり次第お知らせする。
令和4年度のPDCAサイクルには課題を3つ挙げている。1点目は「がん診療情報を収集・分析する体制整備」ということで、院内がん登録のデータ登録数や治療法についてホームページで公表しているが、その内容についてがん登録実務者ミーティングで協議、2月の幹事会で承認されて2020年の症例を公表した。2点目の「がん登録実務の精度向上」ということで、実務者のレベルアップと情報共有を図るために年2回のがん登録実務者ミーティングを開催。3点目の「全国がん登録情報の予後情報還元申請」は、届出されたがん情報の還元申請件数が少ないため、必要な時に円滑に申請が行えるように情報共有を図った。
令和5年度のPDCAサイクルでは、1点目の「がん診療情報を収集・分析する体制整備」は引き続き実施する。2点目の「がん登録実務の精度向上」は院内登録の二次利用は解消されたがオプトアウト管理が必要であり、患者への周知やシステム対応について情報共有を図る。3点目の「全国がん登録情報の予後情報還元申請」は申請が少ない理由として院内のセキュリティー対策の問題、還元データがまだ3~4年分しかなく、病院が情報還元に足踏みをしているなどを聞くため、今年度は情報還元に関する実態把握に努めたい。
⑤「緩和ケア」部会関連
令和4年度活動報告は、12月10日に国の連絡協議会第10回緩和ケア部会に出席した。当協議会の緩和ケア部会の会議は年4回Webで開催した。症状緩和のための専門的治療体制に関する実態調査ということで、拠点病院5施設に神経ブロック、放射線治療IVRに関してどんな治療体制が実施されているかアンケート調査を行った。拠点病院の指定要件に新たに加えられたので、各施設で状況を公開してもらうとともに、兵庫県として情報収集に取り組んでいる。緩和ケアフォローアップ研修会はWebで12月11日に開催した。第13回 緩和ケアチーム研修会は西神戸医療センターの担当で1月15日にWebで開催して22施設が参加した。緩和ケア研修会指導者の会は、緩和ケア研修会の企画責任者に集まっていただき情報共有するため2月2日Web開催し、22名の参加があった。緩和ケアチームピアレビユーの実施ということで、事務局を設置して、今回の第1回はパイロット的に関西労災病院を受審施設として2月24日に実施した。次年度以降は受審施設を倍に増やし、出来れば全施設が受審できるようにシステムづくりをしたい。緩和ケア部会運営事務局会議は毎月第1金曜日にWeb開催している。県内の緩和ケア研修会の日程等は、協議会のホームページに掲載している。
令和5年度の活動計画に関しては、基本的には令和4年度の活動を引き継いで実施する。詳細の説明は省きます。
PDCAサイクルの課題は「緩和ケアチームピアレビュー」と「がんの痛みに対するインターベンショナル」の2点、いずれも4年度は達成としている。インターベンショナル治療に関しては、最新の情報のアップデートが必要なため、次年度も継続としている。ピアレビューに関しては、同一二次医療圏の中でピアレビューをしていただけるよう計画している。
⑥「地域連携」部会関連
令和4年度の活動は、一昨年の実績になるが、がんパスの使用状況についてアンケート調査を行った。その結果、乳がんパスの4,724件をはじめ累計では11,387件で、かなりの数の利用があった。その中で様々の規約の改正に追い付いていないものがあり、実態からずれているので各がんの地域連携パスの見直し修正を進めた。
令和5年度活動に関しては、前年度同様にアンケートで地域連携パスの使用状況を確認させていただき、新たなパスの使用状況の確認とパスの問題点を抽出したい。
PDCAサイクルは、「パスの利用の継続と向上」では、継続的に使用頂いている実態があるが、拠点病院によって波(格差)があって、もう少し使用していただきたいという思いから、評価を概ね達成としている。「パスの運用上の問題点」では、規約等の改正から実態から乖離しているものもあった。各ワーキンググループ中心に検討してもらって改訂作業を進めているが継続中で、評価を概ね達成にした。「がん地域連携の課題の抽出と検討」については、リモート実態調査が出来ていない。ゲノムの情報連携に関してどうなっているかわからないということで、次年度にアンケート等で確認したいと考えている。この3点について、5年度も継続とし、パスの利用状況のアンケート調査、全ての施設における使用上の課題抽出、パスの内容精査、多くの使用状況(ビックデータ)を使ってのパスの臨床研究、がん連携課題の抽出と昨年度に出来ていなかった部分について、アンケートによる課題の抽出を行う。
※昨年度改訂された「大腸がんESDパス」、「子宮体がんパス」の改正内容について、それぞれ説明があった。
〇地域連携パスに対する要望・意見
地域連携パスは、各領域の規約が変われば見直しが必要と思う。地域連携パスは書類のやり取りが原則として作られたが、今後、デジタル化や電子化が進んで行ったときに、地域連携パスのあり方は簡略化されるかなという気がする。何か提案があれば、ご意見をお願いしたい。
(5)がん生殖医療について (資料5/PDF: 602KB)
兵庫県がん・生殖医療ネットワークの運営状況
資料は2022年1月から12月までの兵庫医科大学と英ウイメンズクリニックでの状況で、カウンセリング実施数は女性で38名、男性で42名、平均年齢は女性30歳、男性27.7歳、妊孕性温存の希望の女性36名のうち原疾患は乳がんの22名が最多、男性では42名のうち原疾患は白血病・リンパ腫の20名が最多であった。妊孕性温存には受精卵凍結、卵子凍結、精子凍結、卵巣凍結があるが、県全体で卵子凍結21件。内訳は精子凍結41件、卵巣凍結5件などである。
これまで自費診療で経済的に負担があったが、兵庫県では令和2年4月から一部対象外の市町があったが県内の各市町で開始され、令和3年4月からは厚生労働省の助成事業ということで全国展開され、令和4年4月からは今までの妊孕性温存治療とは別にがん治療が終わってからの温存後生殖医療に対する費用が対象となった。それぞれの助成額、通算助成回数等ついては兵庫県のホームページに掲載されている。
助成金は「小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業」で、申請は患者さんにアプリを取得してもらい、会員番号を施設に伝えて「日本がん・生殖医療学会の登録システム」に参加してもらう必要がある。氏名や住所などは別のサーバーで保存されるので漏れることはない。また別のサーバーでがん生殖の様々な情報を登録してもらうことになる。
〇妊孕性温存による出産について(質問)
健康づくり審議会対がん戦略部会において、妊孕性温存で卵巣、卵子などを凍結した後に実際にそれを用いて出産できた例はどのくらいあるかということが話題になったが、データはあるか。
・がん・生殖医療ネットワークが始まったのが2016年で、5年ごとに集計しているので2021年に1度集計した。正確に覚えていないが卵巣の使用例はなし、卵子は数名で使用が始まっていて妊娠も数例あったが出産まで至っていない。受精卵の使用は乳がん患者が多いが3~4割の使用率で比較的妊娠率も望めていて、10例程度分娩に至った患者さんがいた。
(6)がん患者医科歯科連携協定について (資料6/PDF: 172KB)
令和4年度は前年と同様にがん医科歯科連携DVD講習会を実施した。協力歯科医師診療情報も更新して県内の関連病院に送ったので、かかりつけ歯科医師がない場合の医科歯科連携を行う時に利用いただきたい。また、口腔がん対策推進事業として県内8か所で歯科医師を対象に口腔がん研修を行った。リストは、がん協力歯科医として登録した医師数です。利用いただきたい。
令和5年度も、がん医科歯科連携講習会、口腔がん対策研修など実施していきたい。
(7)小児がんの進捗状況について (資料7/PDF: 1,266,KB)
令和4年度は、緩和ケア診療加算が認められるようになって緩和医療の活動を促進している。また、神戸陽子線センターと連携して陽子線治療に力を入れており、累計261例は小児ベースでは全国1位の実績がある。臨床研究については、昨年9月に文部科学省の科学研究費の助成が受けられるようになったので、研究部の活動を加速できるようになった。AYA世代、特に高校生の教育支援に力をいれているが、現在、遠隔双方向授業ではポケットWi-Fiや受信設備を貸与して原籍校と結んで単位認定に努力している。またゲノム外来は堅調に症例数が増え、12月末にCAR-T(キムリア)療法の施設認定を受け、現在1例目の投与を進めている。
令和5年度は、これまで行ってきた活動を加速したいと考えている。特に陽子線治療に力を入れていく。また、高校生を含む療養関係の充実を行ってきたが、コロナ禍においてもこども病院では面会、付添いは可能な体制となっている。若年者について小児に寄り添った診療ができる環境を整備している。昨年は小児、コロナの入院を重点的に受け入れ、流行全体の波に飲み込まれ、スタッフの就業制限も多かったが、入院制限や病棟閉鎖を最小限にとどめて概ね診療機能を維持して進めることができた。小児・AYA世代のがん患者にとって面会と付添いの環境を維持して診療できるのはメリットがあると考えている。
昨年末に小児がん拠点病院の審査があって、無事に第3期小児がん拠点病院として認められ、診療相談実施支援の実績が高く評価されたが、緩和ケアの提供作業に課題があるという指摘を受けた。書面評価順位が3位ということで努力が認められたと考えている。
当院の小児科専門医65名は西日本で最多と言われ、小児施設として充実している。小児がん医療センターはセンター長をはじめ組織的な体制を組んでおり、血液学会の専門医9名を含む小児がん専門医を5名有している。小児がん診療に関してはさまざまな職種が関連しているので、院内の複数のカンファレンスを組織し、電子カルテ内で議事録を共有できる体制で診療を行っている。緩和ケアについては一番の弱点で、緩和ケア専門医がいない。昨年、緩和ケア認定医を1名確保して緩和ケアチームを運営しているが、今後は専門医を育成できるように研修制度を充実させ、協議会の緩和ケア部会のご協力、ご指導を賜り緩和ケアの内容の充実を図っていきたい。
AYA世代のがん患者への対応として、妊孕性温存について取り組んでいる。2021年の温存提案は19例、温存実施は9例で少しずつ実績が積まれている。また小児専門施設のため、年齢が高くなれば成人医療科の協力が必要になる。神戸大学の南先生指導のもとに「兵庫県の小児がんサポート検討会」を設立いただいているので、移行期の年齢に差しかかった患者さんをスムースに成人医療科にバトンタッチできるよう進めている。
地域との連携体制については、近畿圏で最も西に位置する小児がん拠点病院のため、中国・四国地域と広域連携をして情報共有し、特に中国四国地域には陽子線治療の空白地域が広いので、陽子線治療を重点的に受け入れている。今年度からの「小児血液・がん専門医研修制度」に指導医が不在の施設の神戸大学附属病院、香川大学附属病院と連携を組み、親施設として研修施設群を構成している。がん相談支援室の相談数は多いが、就労においては成人の拠点病院との連携が必要となってくるので、ご指導ご支援をいただきたい。
高校生の教育支援について、県病院局、兵庫県教育委員会と連携し単位認定の仕組みを作っているが、今後、病院全体でのWi-Fiを導入していただけることが決まったので、安定的に提供できる体制が組んでいけると考えている。
その他痛みを伴う処置について病棟麻酔を導入、さらに他施設では困難な年少児の陽子線治療も受け入れている。
(8)その他
〇意見・質疑応答等
①今後の協議会、幹事会のあり方(開催方法)について
神戸に近い人は会場に集まってという考えがあると思うが、遠方の人は集まるのは一日仕事になる。Web開催を続けるのも良いが、何回かは集まるのも有と思う。今後の開催方法について、検討頂きたい。
・コロナ感染が流行する前は対面で開催していた。Web開催は便利だが、ディスカッションはやり難い。協議会や幹事会は、どちらかと言えば、報告・周知を主とする会議と考える。
個人的には、遠方から多くの方に集まって頂くのは大変かという思いもあって、協議会、幹事会はWeb開催が適すると思うが、みなさんのご意見はいかがでしょうか。
この件について、後日でも皆様のご意見を協議会事務局あてにメールをお願いします。
②がん対策推進基本計画において、がん検診受診率の目標を60%に引き上げることについて
第4期がん対策推進基本計画において、受診率の目標を50%から60%に引き上げられた。兵庫県のがん検診受診率は50%に達していないと思うが、何らかの対策が必要ではないかと考える。職域におけるがん検診もさらに検討が必要ではないか。目標数値だけが上がることになる。
・受診率は以前から課題があると考えている。今年度、国は令和2年度から3年間かけて受診率向上に効果のあった受診勧奨策を全国展開しようと考えている。まだ、国から具体的な情報は届いていない。今年度は市町を集めて実施に向けての説明会の開催が予定されているので、市町とも一緒に取り組むみたいと考えている。
職域による検診状況を把握する手段がない。福利厚生的な面で実施されているところが多いと聞いている。国がどんな方法で把握するか検討すると言っているので注視し、県としても職域受診と併せてどのように受診率向上させていくかを考えて行く。
③緩和ケアについて
がん診療連携拠点病院等にまったく関わらずにがん治療を行っている人は、緩和ケアがうまくいっていないのではないか。何か対策が必要と思われるがどのような考えか。
・この意見は、国のあり方検討会、中央の検討会でもがん対策の中で課題として挙げられている議題と思われる。緩和ケア部会は基本的にはがん拠点病院が中心に集まっている協議会になるので、地域の拠点病院以外の施設の緩和ケアの内容について情報を集める手段がない。さらに病院以外の介護施設を含めて在宅に関しても全国的にデータベースを造ること自体が難しい状況になるので、拠点病院以外の枠組みで緩和ケアの質の調査、担保していくかは、国全体としての課題と認識している。個人的には各拠点病院の圏域の中で、連携されている病院に緩和ケアの患者とのやり取りを調べることからだと思うが、全施設にアンケート調査はマンパワーやコスト的に難しいが、検討はしたい。
④就労支援について
医療側は就労支援を頑張っているが、雇用側の意識は変化してきているか教えてほしい。
・就労支援は情報・連携部会が担当になっている。支援は医療の枠組みで活動できるが、直接雇用主にアプローチする手段がない。情報を持ったとしても雇用主に働きかける手段が基本的に持っていないのが現状で、普段はハローワークの担当者まで。そこから先は全く手段、アプローチの権限、ルートがない。
・私の病院は労災病院なので、このようなことをやらないといけないところだ。病院から企業に接することはできないが、一つの方法として、要望があれば企業に出向いて説明する。あとは、兵庫産業保健総合支援センターで保健師、産業医など対象に講習会やセミナーを定期的に開催して、最近は両立支援をテーマに講演しているので、兵庫産業保健総合支援センターのスタッフの方に、この会に入ってもらうのがいいかもしれない。
・兵庫県内に地域で両立支援を推進していこうというチームがある。様々な機関が入って主要グループを組んで、その中に産業保健センターも入って活動されているが、残念ながら企業が入っていないので、こちらからプッシュしていこうという動きがある。
また、療養就労支援の意見書を見ていると、最近会社が指定してきた主治医意見書を発行してほしいという会社が増えている印象がある。その書式が厚労省の意見書の様式に似ているので、以前に比べ少しずつではあるが、両立支援に会社も何らかの形で取り組もうとの動きが見えてきているが、大きな会社が中心なので中小企業にはまだ課題が沢山あるというのが、臨床にいる者としての感覚である。